恋愛をStateパターンで考える


From:

Stephen S. HANADA

Shinjuku, Tokyo

Monday, 11:16 a.m.

親愛なる友人へ、

いかがお過ごしですか?

マッチングアプリはevilだ! カップルを作るという結果を売る体でありがなら、マッチングという過程を売り続けることを目的にしている! そして、結果を提供しないことで儲けている!

このような意見を目にすることが増えました。目にすることが増えた原因は、私の周囲の人に結婚や恋愛を考える人が増えたからかもしれませんし、サービス提供側がどこかで問題を起こしたのかもしれませんし、社会における対立や分断が認識されたからかもしれません。

しかし、私はその背後にある経済や社会よりも、その人たちが行った語の選択に興味が湧きました。「過程」と「結果」という言葉についてです。サービスを提供する側に立てば、カップルになるというのはその人へのサービス提供の終わりであり、結果でしょう。しかし、カップルになるというのは人間関係においては結果ではなく過程であり、ある関係になった状態(State)に対しての分類・名付けです。

さらに見方を変えれば、マッチングというのも結果と考えられます。というのも、デートに誘おうか、もうちょっと知りたいな、という思いは、知人や友人といった多様な関係の中から、色々な交流や判断や会話を経たり、お互いに期待値調整をしたりするという過程を踏んで生じる思いです。マッチングアプリは、さながらジョジョ第5部のキング・クリムゾンのように、それらの過程をすっ飛ばしてマッチングという結果だけを残すようなものです。

ビジネスやアウトプットは成果や結果が全てではあります。しかし、中途半端な成果は、成果を出していない状態よりも劣ることがあります。そして、その成果を出していない状態よりも劣った成果というものとして、過程を経ることや値の変化に対応することが成果として必須であるにも関わらず、それをすっ飛ばしたものが挙げられます。それの一つが恋愛を含む人間関係だと私は思います。

だから、私達が何かを望む時、本当に欲しいものがなにかを考える時、その求める結果について、次の問いを立てねばなりません。

その結果は、過程によって構成されているか

、と。この問いに対するアプローチは多様であり、一意な解があるわけではありません。あなた独自の方法でこの問いにアプローチしてほしいですが、ここでは色々な考え方があることは伝えておきたいです。

例えば、恋愛を含む人間関係は、絶え間ない変化の中にあって、ある状態になった時でも、以前の状態で使ったものがそのまま使われたり、以前の状態が今の状態に影響を及ぼしたりします。これはちょうど、デザインパターンのStateパターンのようなものです。会話メソッド食事メソッド外出メソッド調整メソッド、これらは他人知人友人カップル家族、いずれにおいても使われ、そして状態に依存した振る舞いです。このようにStateパターンかどうかと考えるというアプローチがありえます。ただし、人間関係というのは明示的な状態遷移が必ずしもあるわけではないので、これが唯一の基準となるわけではありませんが、考える材料とはなります。

結果などなく、分類しかないものかどうか、と考えるアプローチがあります。システムの健全性は、値や割合に対するラベリングがあり、その時のラベリングにどう対応するか、そのラベリングと対応がどう変化するかこそが求められます。APIレスポンスの成功率が60%でも健全とみなされることがあれば、99.98%でも健全ではないとみなされることがあります。この時、数字や健全さを求めてもしょうがないです。結果ではなく、ラベルや分類があるだけか、という考え方も一つのアプローチです。

他にも、感情を基準とするアプローチもありえます。扱うものや欲しいもの、いずれかが十分な複雑さ(complexity)を有していて、それには繊細さが求められると感じるもの、つまり自分がやらないと駄目だと思うものは、過程が結果を構成しているものに当てはまるかもしれません。

最後の例は、まさに知を発展させることに該当するものでしょう。学習することにおいて、そして知を発展させることにおいて、自分がやらなければ意味がないし、自分が扱うものは複雑であり、それは他の誰かではない自分が繊細さをもって取り組むべきものだと思っているから、取り組んでいるはずです。そして、このNewsletterもまた、過程が結果を構成するものです。

あなたとの関係があり、これまでのoutputが今回のに影響し、このoutputが次につながり、知の発展という複雑なものに自分の手で書くことで取り組んでいて、調整を絶え間なく繰り返しているのは、まさに過程が結果を構成しているものです。

あるものを求める時には、得られるものは得る過程を必須としているかどうかを問いかけましょう。恋愛においても、システム開発においても、知の発展・前進においても、求めるものの求め方は正しく記述しなければなりません。

それでは、

青を心に。

Stephen S. Hanada

"Gentleman Philosopher"

P.S. 2024年4月に「知的な人と付き合い」と相談を受けたなら、という題で、その問いにどう対応したかを文脈を乗り越えるという観点から述べています。

 「知の前駆者」の真正の記録を配信する"Weekly Newsletter from Stephen S. HANADA"を登録してくれてありがとうございます。
 メールアドレスなどの変更が必要になったらPreferencesから変更できます。もうメールを受け取りたくなくなったら、Unsubscribe もできます。
Shimoochiai, Shinjuku, Tokyo 98104-2205

Gentleman Philosopher

I'm a developer, entrepreneur, and writer who loves to talk about business & entrepreneurship, philosophy, and technology. Subscribe to my newsletter.

Read more from Gentleman Philosopher

From: Stephen S. HANADA Shinjuku, Tokyo Sunday, 12:40 a.m. 親愛なる友人へ、 いかがお過ごしですか? Kiro、Antigravity、GitHub Copilot、Grok、これらを用いて、ボードゲームの戦略を作り、シミュレーションを実行するために、私は個人開発をしていましたが、そんな中にあって、私は自分の行為に疑問を抱き、嘆きました。 「こんなことのために、 貴重な資源を使っていいのか?」 Issueを作り、CopilotとAntigravityに実装させ、テストさせ、それぞれで出されたPRをGrokにReviewさせ、良い方を採用し、シミュレーションとその結果をAntigravityに実行させる。KiroにSpecから作らせて、後はポチポチとボタンをクリックするだけで済ませることも、別レポジトリでやっています。 しかし、その裏には何があるのでしょうか?...

From: Stephen S. HANADA Shinjuku, Tokyo Sunday, 12:11 p.m. 親愛なる友人へ、 いかがお過ごしですか? 「経済学に科学的モデルはない! 予測もなければ説明もない!」 友人たちとの会話の中で、そのような話が出てきたことを私は記憶しています。 確かに、経済学者の語る予測が当たることも少ないですし、起きている事象の説明もあまり有効ではないように見受けられます。もちろん、経済活動というのは人間の信念や行動、そして、組織、行政、気候も関わりますから、予測も説明も困難かもしれません。しかし、科学的なモデルとして期待しているほどのものは提供されていない、と感じてしまうのは、一定の納得感があります。 しかし、それは経済学だけでしょうか? 物理学や生物学でも予測や説明に失敗することはあります。生物学で言えば、そもそもは記録がメインなところが多い学問です。そして、物理学でも、飛行機が飛べる現象や原理の説明も、結局は飛んでいることをそのまま記述し直しただけであり、説明とは言えないものでしょう。...

From: Stephen S. HANADA Shinjuku, Tokyo Sunday, 09:51 a.m. 親愛なる友人へ、 いかがお過ごしですか? 「顧客はドリルを求めているわけではない。穴を求めているのだ」というフレーズはビジネスの場面で度々見かけます。しかし、この主張は字義通りに受け取ってはなりません。そして、 顧客の本質的課題など存在しない 、と私は考えます。 ドリルではなく、穴を。穴ではなく、電線を通す穴を。電線ではなく、計算機が動くことを。計算機が動くことではなく、仕事が楽になることを。……と、このように後退し続け、結局は、富・健康・関係のいずれかの課題に帰着します。しかし、それらの課題を解決する方法はドリルを売っているホームセンターでは取り扱われていませんし、ホームセンターで話すのはナンセンスです。さらに、富・健康・関係というのは、人が関わる市場における重要な課題やテーマではありますが、それらは人や市場において普遍的であるわけでもなく、通時的でもなく、そして偶有的です。だから、帰着したところの富・健康・関係もまた、顧客の本質的課題ではありません。(†1)...