システムという謎に立ち向かうために必要なもの


From:

Stephen S. HANADA

Shinjuku, Tokyo

Sunday, 11:32 a.m.

親愛なる友人へ、

いかがお過ごしですか?

いつもなら、冒頭で個別の事例を取り上げていますが、今日はしません。というのも、今回の事柄に関しては、あまりにも事例が多くありすぎて、選ぶことができないからです。

"system"、「システム」これらの単語が使われている場面は多くあります。

そして、"system"、「システム」、これらの意味も多様です。体系、方法、組織、系、制度、秩序、大規模なプログラム、身体、などなど。全く異なるものと思えるものがひとつの単語で指し示されており、かつ、それぞれの意味に合わせて、この単語に関する理解も人によって多様です。

「システム」の意味や謎を解明するために、様々な文脈に置いて考えてみる、という前回紹介していた手法について、これだけの多様な意味があれば、その手法を採用することは容易いかもしれません。しかし、このような多様さが既に分かりきっている状況に置いては、それぞれの意味をそれぞれの文脈で考えていくよりも、まずは語源に立ち戻ると見通しが立ちやすくなることが多いです。

"system"という語の語源は、古代ギリシア語の"σύστημα"(シュステーマ)です。これは "σύν"(シュン)と"ἵστημι"(ヒステーミ)との組み合わせです。

"σύν"は、「共に」という意味です。

"ἵστημι"は、「立たせる」や「立つ」という意味です。

つまり、直訳すれば、システムというものは「共に立つもの」や「共に立たせるもの」という意味になります。そこから派生して、冒頭で列挙したような様々な構造や事象や物を指すようになったと考えられるでしょう。そして、フラットに考えるなら、この「共に立つもの」や「共に立たせるもの」というのをベースにするのが良いでしょう。

このベースを踏まえても、「システム」というのは人によって多様な捉え方があるのは事実だと思います。例えば、官僚組織などをイメージすると、束ねるための強力な規律があり、その中にいる個々人には何もできることがない、だからシステムは悪いものだ、と考える方もいるでしょう。

私も、そのような硬直化した上下構造は悪いと思います。しかし、それはシステムが悪いのではなく、悪いシステムが採用されているのだ、と考えます。

というのも、本来、システムはシステムとして素晴らしいからです。

システムがシステムとして素晴らしい根拠は、その語義通り、共に立っていること、共に立たせていることによると思います。というのも、システムが求められているからです。

どうしてシステムが求められるのでしょうか? それは、システムがないと困るほどのカオスがあるからです。そして、共に立つものとしてのシステムがあることによって、ある種の秩序が生まれているからです。

人がたくさん集まるところだと、システムは求められる傾向にあります。なぜなら、一人の人のことであっても、それは常にカオスであり、それが 2 人、3 人、集団、集団の集団、となっていくともっとカオスです。そして、システムによって、組織は組織として成り立つことができています。これは当然のことでありながら、驚くべき謎だと思います。

この謎を内側から解明したり、より秩序立たせたりするため、つまり、共に立つ、共に立たせる、それを継続し改善するために必要なのは何でしょうか?

私が考える、一番大事で、簡単で、そして Deliberate な方法は

感謝すること、そして、感動を伝えること

です。

カオスではなく、秩序だっているのは、あなたや私の力によるところもあれば、他の人の力があるからで、さらに、これらの力が相互作用し、一定の方向に向かっていく力となり、カオスをはねのけることができているのです。

だから、他の人の力を感じたのなら、感謝を伝えるべきです。

カオスをはねのけたり前に進んだりしたことに感動を覚えたのなら、感動を伝えるべきです。

感謝や感動を伝えることによって、システムの中にいる人や集団は、喜びを覚え、より相互作用が強くなります。

感謝や感動を覚えるスコープを見つけたり広げたりするためには、どのような力の働きをしているかを先に調べる必要があるかもしれません。しかし、ひとたび感謝や感動を伝えたら、より力の動きが見えやすくなります。

共に立つもの、共に立たせるもの、というシステムの中においては、感謝や感動は強力なツールとなりえます。そして、それらがないと、人が関わるシステムというのは成り立たないとすら思います。

感謝や感動がシステムにおいて良い役割を果たしたと思う体験は多くあります。個別具体的な事例について話すことはせず、私が気をつけてやっててよかったと思うことを話しましょう。

一部に肩入れせず、出来る限り広く、感謝や感動を伝えるようにしたのはよかったかな、と思います。

もちろん開発部に所属し EM という役目を担っているので、開発部とチームメイトが一番です。しかし、事業部やユーザーも同じくらいに大事です。そして、一部の事業部や一部のユーザーとの関連性が強くても、その一部だけで成り立つものではなく、その一部もシステムの中で他の部分と関連しています。

なので、出来る限り多様な人に感謝や感動を伝えました。それによって、どのように相互作用をしているのか、どのような関係性があるのかが、実感として見えました。また、相互作用や関係性も同時に強くもなりました。

私ではなく友人の事例を取り上げましょう。

友人は私が所属する会社とは別の組織で営業をやっています。

日々のアポ取りや案件の獲得は大変です。さらに、エリアやプロジェクトによっては波があり、成績が良い時期もあれば悪い時期もあります。成績が悪い時期にはモチベーションが下がり、もっと成績が悪くなってしまいます。そういう時に、感謝や感動について、私は友人に伝えました。

営業というのは、案件のスタートという大事な地点ですが、しかし、その最初の地点だけに目を落としがちになってしまいます。というのも、忙しいからです。しかし、スタートからどうなっていくかをリアルタイムで追いかけることはできなくても、最後の結果や最終成果物を見ることは比較的容易でしょう。

そこで、営業の友人は、自分が数ヶ月前に獲得した案件の最終成果物をじっくり見て、そして、感動を覚えました。そして、その感動を伝えました。感謝を伝えました。すると、この部分は実はこの人がやったよ、というこれまで知らなかった関係性を教えてもらったり、さらに、こうだったらよかったというフィードバックももらえました。

ちょうど成績が良くない時期で、モチベーションが落ちていた時期の彼にとって、数ヶ月前に取った案件の最終結果は助けとなりました。そこからモチベーションも回復し、事業についてや組織についても考えるようになり、営業活動にも磨きがかかったとのことです。

感謝や感動を伝えることが、共に立つもの、共に立たせるもの、というシステムの中において、偉大な仕事であることはわかりました。

しかし、いつもすぐに感謝や感動を伝えることが出来るようなイベントや気づきがあるとは限りません。むしろ、不平や不満を伝えたくなるイベントや気づきの方が多いかもしれません。では、システムという謎やシステムをよりよくするためには、実際にどういうふうに日々訓練すればよいのでしょうか?

システムには、その意味の上で、複数の構成要素があります。そのため、その要素間の関係性を見ることが第一です。そして、もしそこにアプローチするならどうするか、どういうイベントがあればアプローチしやすいか、そもそもアプローチするべきか、を考えます。

これが日々できることです。

もちろん、感謝や感動を覚えたのなら、それをすぐ伝えた方が効率が良いかもしれません。

だから、もしあなたが共に立つもの、共に立たせるもの、というシステムの中にいるのなら、ぜひ、感謝や感動を伝えてください。この一週間の中で、ぜひやってください。

この世はカオスです。人が関わるところは言わずもがなです。

そのカオスの中にあって、ある種の秩序をシステムは提供しています。

しかし、システムはそれ単体のものではなく、そこには関係性があり、相互作用があります。

その関係性の中で、不平や不満を言いたくなることもあり、そして、伝えなければならないときもあります。もちろん、感謝や感動を伝えることが第一に重要だと私は思います。しかし、ただの仲良しではそれはシステムにはなりません。

前に進むためには、システムという謎を、共に立たせていきましょう。

それでは、

青を心に。

Stephen S. Hanada

"Gentleman Philosopher"

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